発表の内容 — 何が決まったのか
2026年7月23日、BitMEXの運営会社であるHDR Global Trading Limitedの取締役会は、事業の戦略見直しの結果として取引所を閉鎖する決定を発表しました。同社はセーシェルに法人登記され、2014年から取引所を運営してきました。
重要なのは、これが買収や事業譲渡による運営主体の交代ではないという点です。取引所という事業そのものを終了させ、利用者資産の返還だけを残す形の店じまいです。したがって「新しい運営元のもとでサービスが続く」という展開は想定されていません。
発表と同時に新規口座開設が停止されました。これは一時的な受付停止ではなく、再開の予定がないものとして案内されています。既存の利用者についても、以下に整理する日程に従って段階的に機能が縮小していきます。
3つの節目を時系列で
- 第1段階:新規口座開設の恒久的停止(実施済み) 閉鎖の発表と同時に即時実施。この日以降、BitMEXに新しく口座を開設することはできません。既存口座の利用は継続していますが、期限付きです。
- 第2段階:リスクリミット適用、決済のみに移行 この時刻から新規建玉ができなくなり、既存ポジションの縮小のみが可能になります。同時にBitMEX側が秩序ある市場の収束のために既存ポジションの強制決済を開始します。
- 第3段階:全サービス終了(Closure Time) 資産の保管を除くすべてのサービスが停止します。残っている建玉は即時強制決済。ステーキング中のBMEXトークンは全て自動的にアンステークされ、保有者の口座で利用可能になります。ログイン自体は残高照会と出金のために維持されます。
- 第4段階:口座維持手数料の発生 KYC済みで残高が残っている口座に対し、月次で「USD50相当」または「年率1%」のいずれか大きい方が課されます。出金が完了しない場合、将来的に手数料が引き上げられる可能性も予告されています。
段階ごとにできること・できないこと
自分がいまどの段階にいて、何が残っているかを確認するための対応表です。行動の選択肢は段階が進むほど減ります。
| 機能 | 〜8/26 | 8/26〜9/23 | 9/23以降 |
|---|---|---|---|
| 新規口座開設 | 不可(7/23に終了) | 不可 | 不可 |
| 新規建玉を開く | 可 | 不可 | 不可 |
| 既存建玉を縮小・決済 | 可 | 可 | 不可(強制決済済み) |
| 現物取引 | 可 | 縮小のみ | 不可 |
| 入金 | 可 | 要確認 | 不可 |
| 出金 | 可 | 可 | 可(手数料発生) |
| ログイン・残高照会 | 可 | 可 | 可 |
| BMEXステーキング | 可 | 可 | 自動解除 |
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出金の期限は9月23日以降も続きますが、「自分の判断で建玉を閉じられる」期限は8月26日です。それ以降は縮小しかできず、最終的には価格を選べない強制決済になります。端数を出金可能な単位にまとめる作業も、取引ができるうちにしかできません。実務上の締め切りは8月26日13:00 JSTだと考えてください。
強制決済はどう行われるのか
公式発表では、8月26日以降にBitMEX側が「秩序ある市場の収束のために」既存ポジションの強制決済を開始するとされています。またリスクリミットの適用により、この時点から新規のポジション構築ができなくなります。閉鎖時点で残っている建玉は即時に決済されます。
ここで理解しておくべきなのは、強制決済の価格を利用者が選べないという点です。通常のロスカットと同様、その時点の板の状況に従って約定します。閉鎖が近づくにつれて参加者が減り、板は薄くなっていきます。板が薄い状態での大口決済はスリッページが大きくなります。
結論は単純です。自分で閉じたほうが、ほぼ確実に条件は良くなります。強制決済を待つ経済的な理由は存在しません。
本サイトの評価
レバレッジをかけたポジションを保有している場合はさらに急ぐ理由があります。閉鎖に向けた流動性の低下は、価格の振れ幅を広げる方向に働きます。証拠金維持率に余裕がないポジションは、閉鎖日を待たずにロスカットされる可能性が平常時より高いと考えるのが妥当です。
閉鎖後のアカウントはどうなるか
公式発表によると、閉鎖後もログイン機能は維持されます。ただしその目的は限定されており、残高と取引履歴の確認、そして出金のためだけとされています。取引機能は復活しません。
口座維持手数料の条件
KYC済みの利用者が閉鎖後も残高を残している場合、月次で手数料が請求されます。金額は「USD50相当」または「年率1%」のいずれか大きい方。さらに、出金が完了しないまま時間が経過した場合には手数料が引き上げられる可能性があり、その際は事前に告知されるとされています。
| 残高 | 年率1%相当 | 実際に効く基準 | 1年でどうなるか |
|---|---|---|---|
| USD 300 | USD 3 | 定額USD50 | 半年ほどで残高が消える |
| USD 2,000 | USD 20 | 定額USD50 | 年USD600 — 残高の30%が消える |
| USD 10,000 | USD 100 | 定額USD50 | 年USD600 — 残高の6% |
| USD 60,000 | USD 600 | ほぼ分岐点 | 年USD600 — 残高の1% |
| USD 200,000 | USD 2,000 | 年率1% | 年USD2,000 — 残高の1% |
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この表から読み取れる結論は一つです。小さい残高こそ放置すると割に合いません。数百ドル規模の残高は、定額の下限手数料だけで数か月から1年で消えます。「金額が小さいから後でいい」という判断が、最も損失率の高い選択になります。
月次の課金がどの日付で発生するか、率と定額をどのタイミングで比較するかといった運用の細部は、公式の案内が優先されます。当サイトの表は「下限が定額で効く」という前提での概算です。実際の請求条件はBitMEX公式の発表と、登録メールアドレスに届く案内で確認してください。
なぜ閉じるのか — 背景の整理
公式発表では理由を「事業の戦略見直しの結果」としており、それ以上の具体的な説明はされていません。ハッキングによる資産流出や、支払い不能を理由とした閉鎖であるという発表はありません。したがって、経営判断による撤退として理解するのが現時点で最も妥当です。
文脈として押さえておくと理解しやすいのが、この取引所が歩んできた経緯です。2016年にパーペチュアルスワップを商品化し、満期のない先物という設計を業界標準にした一方で、2020年から2021年にかけて米国当局から未登録での取引所運営とマネーロンダリング対策の不備を問われ、多額の民事制裁金を含む和解に至りました。創業者らも個別に司法手続きの対象になっています。
この件を境に全ユーザーへの本人確認が義務化され、匿名で高レバレッジを取れる場所という当初の差別化要因は失われました。その後、デリバティブ市場の主戦場は規模で上位の取引所と、オンチェーンのパーペチュアル市場へ移っていきます。技術的な先行者が市場シェアを維持できなかった、という構図です。
公式サイトでは閉鎖発表の時点で累計210万人以上の利用者、4ミリ秒未満の約定レイテンシ、資産の95%以上のコールドストレージ保管、2億5000万米ドル規模の保険基金といった数字が掲げられていました。これらはすべてBitMEX自身の公表値であり、当サイトが独立に検証したものではありません。引用する意図は、閉鎖がセキュリティ上の破綻によるものだと確認されているわけではない、という点を明確にするためです。
利用者にとっての教訓は明快です。ハッキングされなくても取引所は消えます。コールドストレージ比率や保険基金は資産流出への備えであって、事業継続の保証ではありません。だからこそ、長期保有分を取引所に置き続ける設計そのものを見直す機会として扱う価値があります。
結局、いま何をすべきか
- サブアカウントを含めて全残高を洗い出す ウォレット残高、拘束中の証拠金、未実現損益、ステーキング中のBMEX。メイン口座だけを見て終わらせないでください。
- 8月26日13:00 JSTまでに建玉を自分で閉じる 強制決済を待つ理由はありません。板が厚いうちに決済したほうが条件は良くなります。
- 端数を出金可能な単位にまとめる 最低出金額を下回る残高は出金できません。取引ができる期間のうちにしか整理できない作業です。
- 受取先を用意し、少額でテスト送金する ネットワークの一致を確認してから、まず少額。着金を確認してから残額を送ります。
- 9月23日より前に全額の出金を完了させる 閉鎖後も出金は可能ですが手数料が発生します。出金の混雑と追加審査による遅延も予告されています。
よくある質問
BitMEXの閉鎖はいつですか
8月26日には具体的に何が起きますか
閉鎖後もログインできますか
残高を出金しないとどうなりますか
BitMEXは別の会社に買収されて存続しますか
閉鎖はハッキングや資産流出が原因ですか
ポジションを放置したらどうなりますか
このページの情報はどこから来ていますか
出典
数値はBitMEX公式サイトの公表値です。最新の情報は必ず公式サイトで確認してください。